推しがプリキュア声優したら担降りする

ヲタトーーク!
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「遠い昔 はるかかなたのオタク街で…」

男は、ある声優を推していた。

デビュー当初、同期に比べるとあまり売れなかった

表情作りが苦手で変なあだ名も付けられた

ユニットを組まされたりもした

人前で歌うのも苦手だった

しかし、本人の努力と熱心なファンが

彼女を人気声優へと押し上げていった

しかし、熱心なファンが曲者だった

ある者はコンサート会場の備品を壊した

ある者は新宿駅での台風中継のカメラにCD片手に映り込んだ

また、応援ハッピやハチマキを着用したまま

繁華街でのコールも日常茶飯事だった

本人も、Twitterで人気アカウントになったが

嫌がらせが多く、辞めることになった

彼女はその手の嫌がらせへの耐性が低かったのだ

肝心の声優としての仕事では

レコード会社絡みでの深夜アニメでの主役が数本あったり

深夜アニメが急遽キッズアニメになったり色々あった

他にも、明らかに原作者から希望されたような配役や

オーディションで勝ち取った役など

様々な役をこなしていった

でも、男はいつも思っていた

「彼女にプリキュア声優になって欲しい」

プリキュア声優になるにはオーディションの他にも

スケジュールを1年間空けないといけないという

何故、プリキュア声優になって欲しかったか?

それは男の夢だったのだ

飲み会で「君、アニメとか好きなんだ?」

「はぁ」

「好きな声優とかいるの」

「はぁ」

「何やってるの?プリキュア?」

最初はこれが辛かった

プリキュアになれる声優でないと、世間は認めないのか?

深夜のアニメで主役を何本張っても、状況は変わらないのだ

男はコンサートに足を運び

アーティストとしての彼女を布教し

出演アニメも観て、好きな作品は円盤を買い

もちろんファンクラブにも入り

自分に出来る限りの応援をしてきた

新曲にラップパートがあれば、必死に覚え

口上のある曲はネットで調べ覚えた

コンサート会場では、振り真似野郎と戦い

ロマンスと戦い

必死にサイリウムを振り上げた

彼女を推すことは、男のオタクとしての青春だったのだ

もう、プリキュアのことは諦めよう

マルチロールとしていつまでも活躍してくれればいい

そう、思うようになったのだ

そして、時は流れた……

ある日、翌年のプリキュアが発表になった

その年も、メインのプリキュアに彼女の名前は無かった

しかし、今回は違っていた

メインにかなり近い配役に彼女が居たのだ

「追加プリキュアなのか?」

男の胸がざわついた

例年通りなら、夏頃にプリキュアは増える

おもちゃを売るためとか、テコ入れとか

大人の世界は色々あるんだろうが、そういうのはどうでもいい

推しがプリキュアになる道が見えたのだ

男は例年以上にプリキュアを必死に観た

その年のプリキュアはメインが3人だった

増えるとしたら、大体1人

彼女はサブキャラを担当していた

追加プリキュアになる可能性を見せているのは2人

うち1人は推しだった

毎週、気が気でなかった

プリキュアには、思わせぶりで

追加プリキュアを幼女たちに誤認識させる悪い癖がある

それは保護者や大きなお友達相手でも同じなのだ

男もフレッシュの時に

てっきり、好きなキャラが追加プリキュアだと思い込み

見事に裏切られた過去があった

推しがプリキュアになるかどうかの瀬戸際なのだ

どちらがプリキュアになるのか?

毎週、気が気でなかった

そして、時は来た。

……2人ともプリキュアになったのだ

驚きと安堵そして感動

それは男が夢見た景色だった

若手の時にユニットを組んだ声優も

十数年続くシリーズでダブル主人公を張る相方も

既にプリキュアになっていた

遂に推しがプリキュアになる日が来たのだ

推しの代表作は?と聞かれて

プリキュアです

と答えられるのだ

嬉しさと、感動

いや、感動なんて軽い言葉では表現できない

震え上がる感情があった

追加プリキュアになれたということは

エンディングのダンスにも加わる

この年はエンディングを声優さんが歌う年だった

推しが生命を吹き込んだキャラクターが歌って踊っている

これ以上の言葉は不要だった

推しがプリキュアになってしばらく経ったある日

プリキュアの着ぐるみショーを観に行った

そこには、大音量で推しの声が降り注いでいた

会場の幼女たちが推しのプリキュアを応援している

その姿を観られただけで、満足だった

推しが出演するプリキュアの放送が終わりすぐに

推しのファンクラブイベントがあった

二日連続開催で、二日目は推しの誕生日だった

何も考えずに二日ともチケットを押さえ

初日の会場へ足を運んだが

そこで違和感を感じていた

「もう、ここは自分のいる場所ではない」

そんな感じが、したのだ

そして二日目……

男はチケットを無駄にした

会場へ行かなかったのである

それは推しへの決別

それは推しからの卒業

言葉は色々あるだろう

彼女を必死に推していた頃の若かった男は

既に40代中盤を迎えていた

潮時

それもあるかもしれない

もう、あの頃には戻れないのである

男は推しがプリキュアになれたことに満足しすぎたのだ

気が付けば、ファンクラブを退会し

所持していた推しのCDやDVDを売っていた

男は推しの同担拒否だったので

親しい人との別れは無かった

喪失感はそんなになかった

新しい推しを見つけたからではない

満足しての担降り

もう、思い残すことはない

ありがとう

元・推しさん

これからも、お仕事頑張ってください

陰ながら応援しています

追伸

早く結婚してくれると、個人的には嬉しいです

ネットもざわつきません

余計なお世話ですね

すいません

それでは

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